薬事ニュース社
オピニオン

>>>「迅速導入評価制度」<<<
 次期薬価制度改革に向けて日本製薬工業協会が提案している「迅速導入評価制度」を巡り、中央社会保険医療協議会・薬価専門部会で議論が始まった。「迅速導入評価制度」は、医療上特に必要とされる品目を対象に、欧米への上市後の一定期間内に国内上市するなど、国内に迅速に導入した場合の薬価上の評価で、収載時には類似薬の外国価格の水準に劣らない価格を設けるほか、収載後には薬価を維持し、市場拡大再算定の対象からも外す。新制度の導入でドラッグラグ・ロスの解消を目指す考えだ。
 ただ、7月12日の薬価専門部会では、診療・支払側委員から慎重な意見が目立った。診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は「ドラッグラグ・ロスは研究開発段階の要素が大きいため、まずはその見直しをするのが先決ではないか。医薬品のイノベーションの研究開発費などについて、公的医療保険財源で手当てするのは違う」と切り出した上で「米国の桁外れの価格設定は米国自体でも問題になっており、欧米と同じ薬価を設定できれば、ドラッグラグ・ロスが解消されるというのは言い過ぎではないか」と疑問視した。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「薬価制度の抜本的な見直しを行うには議論の時間が少し足りない。次期薬価制度改革は現行制度を前提とした上でどのようなことができるのかを議論すべき」と牽制した。
 一方、診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は「特許期間中の薬価維持は必要な対応と考えるが、新薬全ての薬価を維持するのではなく、一定程度のメリハリは必要だ」と述べ、「どのような品目で薬価を維持すべきなのか、業界が考える優先度などを今後のヒアリングで聞かせて頂きたい」と水を向けた。「迅速導入評価制度」についても「こうした視点の対応は必要」と一定の理解を示した。
 次期薬価改定・薬価制度改革に向けて中医協・薬価専門部会では、関係業界からのヒアリングを経て本格的な議論に着手した。「新薬」「長期収載品」「後発医薬品」の各論別に検討を進め、薬価算定組織への意見聴取を終えた後に、再び業界ヒアリングを実施。10月頃から各論に関する第2ラウンドの議論に入り、3度目の業界ヒアリングを経て年末に骨子を取りまとめる方針だ。
(2023年7月21日掲載)