薬事ニュース社
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>>>高齢者医療制度の負担凍結には驚いた<<<
 自民、公明両党の「与党・高齢者医療制度に関するプロジェクトチーム(PT)」は、来年4月に実施が予定されている70~74歳の医療費自己負担1割から2割引上げ、および75歳以上の後期高齢者医療制度における被扶養者からの保険料徴収の凍結問題について議論を開始した。両党はすでに来年4月からの凍結に合意しているが、負担軽減には1000億円規模の財源確保が必要となる。
 今回の措置は、与党の参院選敗北を受けて、小泉純一郎元首相、安倍前首相が推し進めた改革路線を修正したものだが、永田町には「バラまき」との批判を懸念する声もある。高齢社会の進展を見据え、社会保障費の伸びの抑制を進めてきたのは政府だ。福田康夫首相は、構造改革を維持しつつ格差の是正に取り組むと、所信表明で語った。改革で生じたゆがみに目を向けるのは結構だが、改革の単なる後退、問題の先送りは避けなければならない。選挙に負けたから、とりあえず負担増を回避するというのか。格差の中で真っ先に取り組まなければならない問題が、なぜ高齢者医療なのかもよく分からない。「高齢者は税と社会保険料が重なって負担が急増している」との発言がPTではあったというが、それらの負担増を決めたの今の与党の枠組みではないのか。法案を提出した与党が法律の実施を前に負担見直しを言うことに驚いた。
 格差是正、安心を語るのであるのならば、少なくとも社会保障全体の青写真を示すべきではないか。その点で、福田政権の政策が、現時点で十分に示されたとは思えない。
負担凍結に伴うコストをどう捻出するのか、業界にとっては、不安の種だろう。
(2007年10月12日掲載)