薬事ニュース社
オピニオン

>>>まず隗より始めよ<<<
 「私は新薬が出ると必ず自分で飲んでみる。確信がもてないものは患者に出せない。SGLT2阻害薬も飲んでみた」。SGLT2阻害薬をテーマに開催されたメディアセミナーで、講師を務めた専門医がこんなエピソードを披露する一幕があった。飲んだ結果は、「糖尿病ではないので有効性は分からないが、安全性は問題なかったし、非常に快適で、体重も落ちた」。
 医師だけではない。薬剤師からも同じような趣旨の話を時々聞く。こちらは新薬よりも後発品が出た際に、錠剤の飲みやすさや味のチェックをするのだとか。価格の安価さだけではなく、「先発品は苦味が強いが、ジェネリックはオレンジ味でマスキングしてあるので飲みやすい」など、実際に「味見」して特徴を把握していると患者への説明もしやすいし、ジェネリックへの切り替えもスムースに運ぶケースが多いという。
 さて、政府が6月末に閣議決定した「骨太の方針」で、最大の焦点のひとつになっていた後発品の新たな使用目標は、「2017年半ばに(数量シェア)70%以上」とする中間目標と「18年度から20年度末までの早い時期に80%以上」との2段階の数値目標を掲げることで決着した。30%から60%への引上げからわずかな間隔での80%への嵩上げに、「国内市場の将来的な着地点が見えた」とする見方がある一方、あまりに急激な変化への懸念も聞かれる。なかでも、60%を前提に中期計画を策定していた後発品業界は戸惑いを隠せない。20年、そして高齢化のピークの25年に向け、国内医薬品市場は劇変期を迎える。
 他方、こうした政府の性急な促進策に対し、医師会は「まず政府関係者から(後発品使用を)徹底すべきでは」と牽制する。お説ごもっともである。協会けんぽや健保組合があの手この手で後発品への切り替えに躍起になっているなか、国家公務員共済が無策というわけにはいかない。さらに、現役総理の窮地を救ったことで話題になった潰瘍性大腸炎治療薬にも、いよいよ後発品が参入する。首相の後発品使用を野党が質すといった場面が遠からず見られるに違いない。
(2015年7月17日掲載)