薬事ニュース社
オピニオン

>>>姿を消す生き物<<<
 ここ数年、身近な生き物が姿を消しているように感じている。例えばカラスやスズメなどの鳥類、トンボや蝶といった昆虫を見ることがめっきり減った。私が子供だった20年ほど前は、そこら中にいたと思う。
 先日このことを調べてみると、環境省が2016年から2021年にかけて約20年ぶりに実施した「自然環境保全基礎調査全国鳥類繁殖分布調査」では、野鳥が減少していることが報告されている。このままのペースで減少し続けると、将来的には絶滅危惧種に指定するなどの可能性もあるという。日本だけでなく北米でも、同様の現象はおきており、鳥の個体数は1970年から比較すると約30億羽減少しているらしい。昆虫に関しても、数十年前と比べてかなり個体数が減っているようだ。
 昆虫は、鳥、魚、哺乳類など数多くの生物の食糧であり、蝶など花粉を運ぶ種はいわゆる益虫で、果物などの栽培において極めて重要な役割を担っている。カラスだってネズミの死骸や害虫を食べ、人間にとっても益をもたらしてくれている。もし仮にこれらの生物が絶滅してしまったらどうなるのか。その影響は全く想像できないが、おそらく人類に壊滅的なダメージを与えるはずである。かつて何十億羽もアメリカに生息していたリョコウバトは、乱獲などにより絶滅した。もしかしたら今まで見慣れていた生き物を見ることができないという恐ろしい未来が迫っているのかもしれない。
(2022年6月24日掲載)