薬事ニュース社
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>>>横綱の病気<<<
 腰の疲労骨折を理由に大相撲夏巡業を休場した横綱朝青龍。帰国中のモンゴルでサッカーに興じていたことから仮病疑惑が浮上し、大相撲最高位である横綱としての行動・品格について取り沙汰されている問題は、事件の発覚から1ヵ月以上経ってなお、混乱が収まる気配は無い。2場所の出場停止と減俸などの処分を言い渡された朝青龍が、重度の精神的な障害を患ってしまったとされるからだ。「神経衰弱状態及び抑うつ状態」や「急性ストレス障害」、「解離性障害」と2転、3転する診断結果に、問題の焦点は、横綱としての責任問題から、朝青龍の治療問題へと移行してしまった。現状では、当人の病状を回復させることが、事態の解決に繋がる唯一の方策と言えよう。
 朝青龍に限らず、精神に係る疾患の治療には、当人はもとより関係者の多大な労力を必要とする。疾患の原因には、心理的な問題や社会的な問題が大きく影響しており、その治療も継続的に行う必要があるからだ。精神に係る疾患が、一個人の極めて特殊な事例として見られていた時代と違い、現在では、誰にでもかかる病気として認識されるようになってきた。薬物療法や心理療法の充実、専門的な医療関係者、資格の増加といった前向きな話も多い。ただ、こうした患者に対するケアは、社会全体でみればまだまだ十分とはいえない。横綱の資格云々は一部関係者の話であるが、精神の疾患に関する話題と捉えれば、他人事ではすまされない。
(2007年8月31日掲載)