薬事ニュース社
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>>>健康格差の種は蔓延している<<<
 20年ほど前に英国を訪れた際に印象的だったのは、住人の体格差が著しい点であった。2m近くの高身長から1m60そこそこの人、男女問わず豊満な人々、見窄らしい人々……。英国は階級社会であると言われているが、日本以上に「見た目」でも格差が判然とすることを実感した。当時、日本人はかなり「粒揃い」だとも思った。英国国家統計局のデータ(1992~96)によると、最も高い階級に属する男性と低い階級の男性の平均寿命では約9年の差が開いたという。健康格差は、階級間だけでなく国家間にも認められる。昨年世界的な脅威となりつつあったエボラ出血熱に関しても、セネガルやナイジェリア等、西アフリカの中でも先進的な国では早い段階で一応の終息が見られたのに対し、最貧国グループに属する他の国々では流行が長引いている。また健康格差は、社会環境や経済の動向にも大きく関連づけられる。翻って日本を見てみれば、近年になって子供の貧困率の上昇、一人暮らしの増加、地域からの孤立化、所得の低下等々、健康面での格差を生じさせる種ともなり得る要因がそこら中で散見されるようになった。一億総中流なんて言葉はふた昔も前の言葉だ。格差が問題なのは、精神的にも堪える点である。いわゆる勝ち組/負け組を多く生み出してしまう社会は居心地悪く物悲しい。かくいう自分も、健康面で〝下に振り落とされないよう〟毎朝2駅分を歩き、処方された薬の服用は遵守し、しおらしく(?)スイーツや嗜好品は控えめにしている。タガが外れないよう慎ましく暮らさざるを得ない人が増えている――というのが2015年年明けの実感である。
(2015年1月9日掲載)