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>>>「旧来」のセンス<<<
 日本循環器学会学術集会のプレスカンファレンスで、自治医科大学の永井良三学長は、一連のディオバン問題に関する見解を披露した。永井氏曰く「時代の変化の中で起こったことだ」。
 日本で臨床研究が重要視されてきたのは、ここ20年のことで、人材育成やコンピューターシステムなど研究体制がしっかりできていないところで、「旧来のセンス」で大規模臨床研究を行うようになったことが、さまざまな問題の原因の一つだと指摘している。
 かつてと違い、臨床研究は「極めて難しい問題に挑戦しないといけなくなった」と永井氏は言う。効能・効果だけでなく、「イベントも防いで初めて治療薬として意味があると考え方が変わってきた」ため、数千例規模での臨床研究が必要となった。日本におけるディオバンのスタディは、そういう意味では「先頭を切った」研究だ。しかし、日本の研究体制は十分に整備されていなかった。永井氏によると、ディオバンにおける五つのスタディを海外で実施した場合、100億円規模の研究費が必要なところ、日本では「中途半端な額で大きな課題に挑戦」となったのだという。
 しかし、だからといって研究の透明性や正当性を犠牲にしてはならない。臨床研究に対する体制強化や規制の見直しが進んでいるが、「旧来のセンス」が今も脈々と受け継がれているとしたら、今後も新たな疑惑が続々と浮上するのではないだろうか。
(2014年3月21日掲載)