薬事ニュース社
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>>>後発品業界の再編<<<
 小林化工に続き、業界大手の日医工の不祥事案が発覚したことで、後発品全体への信頼が揺らいでいる。薬価政策を審議する中医協でも、委員から懸念を表明する意見が相次ぎ、3月の総会では、支払い側委員が、「これで(後発品に対する)国民の信頼感が一気に崩れ去るのではないかとの懸念が出ている。保険者の組合員からも『やはり後発品はだめなのか』といった意見も出始めた。早急に対処して信頼を回復しなければならない」と苦言を呈した。また、薬剤師会代表の診療側委員も、「今回の不祥事で後発品調剤のための備蓄などに影響が生じ、薬局経営に大きな影響を及ぼす可能性がある」などと訴えた。さらに5月の薬価専門部会では、日医委員が、「1つの先発医薬品に対する後発品の品目数が、あまりにも多すぎることが問題であると診療側では指摘してきた」とし、後発品企業の数の多さが、今回露呈した問題の一因にあるとの見解を示している。
 こうした意見に対しジェネリック企業側は、「品目数の多さが品質の問題に関連するとの指摘だが、我々としては今回の問題は、根底にコンプライアンスの欠如やガバナンスの機能不全があったと考えている。決して数の問題ではない」(日本ジェネリック製薬協会・澤井光郎会長)と反論しているが、厚労省の医政局経済課長は「後発品については従来から、中医協でも企業数や品目数の多さ、共同開発の問題などが指摘されてきた。後発品も(数量シェアで)8割を占める時代を迎え、量から質の問題への転換が必要であり、業界再編も真剣に考えるべき時期にきたと捉えている」と明言している。
 すでに「政府主導の後発品企業の編成があってもいい。世界的にみても企業数が多すぎる」(東京都薬剤師会・永田泰造会長)との声も聞かれる。経済課長の中医協での発言が、即、「官主導による後発品業界の再編」にまで踏み込む意向を示したものかは現時点では見通せないが、今夏に改訂予定の「医薬品産業ビジョン」で、行政の何らかの考え方が提示されるのは必至の情勢。変革のうねりが、後発品市場にひたひたと押し寄せている。
(2021年6月4日掲載)