薬事ニュース社
オピニオン

>>>景気低迷にもめげない米国流の強かさ<<<
 「薬価改定の前には、MOSS協議の決定に基づき、必ず米国企業団体からヒアリングを行うが、米国で制度改革が行われる場合でも日本企業からヒアリングなどしない。私は『ばかばかしいから止めよう』と言ったのだが、外務省が止めさせてくれない」。医療課長も務めた厚労省前局長が、ある講演会で「現役中の不満」をそう漏らした。米国企業の外交力を示すエピソードのひとつに過ぎないが、昨今の大型M&Aの動きを見るにつれ、その機敏さにはやはり舌を巻く。ファイザーとメルクという米国籍のメガファーマが(そして裏を返せば、同じく米国籍のワイスとシェリング・プラウが)、続けざまにM&Aに動いた背景には、自国の医療保険制度改革への警戒心があったことは否定できないだろう。「大きすぎて潰せない」企業の誕生は、オバマ政権にとって有形無形のプレッシャーとなるに違いない。大統領にしてみれば出鼻を挫かれた思いかも知れない。
 さて、此方日本企業は、グローバリズムの否応ない荒波のなかで、かつて「株式会社ニッポン」と揶揄された横並び主義や面倒見のよさは脱ぎ捨てたものの、代わりに得たものといってはどうも心許ない。確かに、外見だけは米国流のドライな装いでばっちり固めた企業も少なくない。ドラスティックなリストラや再編もいまや日常茶飯事だ。しかし、国の薬剤費抑制策に右往左往し、自ら提案した薬価制度改革案でも官僚にいいように弄ばれ、中医協委員には木で鼻をくくったような説明で怒りを買う姿は、いかにも交渉下手を印象付ける。ことの善し悪しは別にして、米国流の強かさばかりが目に付く春の日である。
(2009年3月27日掲載)