薬事ニュース社
オピニオン

>>>ニャーとか言われても<<<
 観光庁が制作し、7月から133の国と地域で放映されている観光客誘致CF「Message from Japan」の評判がすこぶる悪い。これは震災を機に大幅に減少した外国人観光客を呼び戻すために、今をときめくアイドル・グループの嵐が人間招き猫となって、日本中で「ニャー」と鳴くCFで、TVで目にした方も多いだろう。しかし2か月ほどたった今も、CFが功を奏したという話はまず聞かない。
 嵐の5人がどれだけ頑張っても、それ以前に多くの外国人がリスペクトするような、伝統的でわかりやすい日本像がほとんど映されていない、というのが大方の意見だ。風景には富士山ではなくなぜか桜島が映し出されるし、食事も寿司や天ぷらではなくジンギスカンなど、微妙にドメスティックなチョイスが目立つ。自分の周辺でも外国人の反応は大抵渋いもので、北海道に対しては「日本でソフトクリームを食べることがそんなに重要か」、沖縄に対しては「青い海なら世界中にある」などと手厳しい。某ニュース誌を開けば、日本びいきの外国人特派員が「素晴らしい国を自ら馬鹿にしている」と義憤に燃えているし、日本人が集うネット掲示板でも、「これは嵐のためのCF」などと、酷評の嵐が吹き荒れている。確かに概ね同感だ。
 各方面から余計な口出しも沢山あっただろうが、今回のCFが見事にスベっているのは、やはり多くのシーンが、結局は我々日本人に向けて作られたように見えるからだろう。5人がゆるキャラ風に「ニャー」と鳴く姿は確かにキュートかもしれないが、しかし成人男性のそんな仕草が手放しで歓迎される国も、そう多くはないはず。結局は疲れた日本人同志が、映像を介して無意識に傷を舐めあっているような──とまで言ったら、流石に言いすぎか。
(2011年9月16日掲載)