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>>>2020年度診療報酬・薬価改定<<<
 2020年度診療報酬改定は、財務省からの引き下げ圧力にも屈することなく、診療報酬本体はプラス改定となった。一方、薬価制度改革は、改定率も含め、製薬業界にとってプラスとなるような内容には乏しかった。最後の最後で、懸案となっていた、「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」の対象品目を比較薬とする薬価算定のあり方を巡り、「類似薬効比較方式Ⅰ」で算定された新薬で、加算対象外の品目に対して、薬価収載から3回目の薬価改定時までに、効能追加によって加算対象にならなければ、収載時点での比較薬の累積加算分を控除する方向で落ち着き、「加算対象外の品目の薬価算定時に比較薬の加算分を加えるのは理屈に合わない」とした支払い側の反対論を凌いだ。また、見直しを求めていた「新薬創出加算」の「品目要件」や「企業指標」に関しても、「品目要件」では「先駆け審査指定制度」の対象品目や薬剤耐性菌治療薬を追加する方向性が打ち出され、「企業指標」の見直しでも、「革新的新薬」を過去5年に収載しているかどうかでポイントを付ける新指標を導入する方針が示されるなど、一定の譲歩は得た形となった。が、それが精一杯だった。
 すでに製薬業界では、新薬大手の間でも、「新薬一辺倒のビジネスモデルは続かない」(田辺三菱製薬・三津家正之社長)などとして、異業種等も含めたアライアンスによって状況を打開しようとする動きが顕著になっている。このことはすなわち、政府挙げて「画期的新薬の創出を支援する」とした謳い文句とは裏腹に、実際の制度は、必ずしもそのような設計にはなっていないことの証左であると見ることもできる。事実、この数年間に上市された「画期的新薬」は、「高額薬剤」批判を背景に、(品目によっては複数回も)再算定の対象となり、価格引き下げの憂き目に遭っている。
 高騰する医療費財源との兼ね合いがあることは関係者なら十分に承知している。が、現状の財源ありきの薬価制度改革が限界にきていることもまた、明白なように映る。
(2020年1月17日掲載)