薬事ニュース社
オピニオン

>>>2つ目のマシュマロを得るために<<<
 4歳児にマシュマロを1つ渡す。実験者が「私はいったん部屋を出るけど、帰ってくるまで食べずに待っていたらもう1つあげるよ」と伝え、反応を調べた実験が1960年代に米国で実施された。何人かの子供達は実験者が部屋を出るや否やその1つのマシュマロを頬張り、2つ目のマシュマロを獲得できなかった。また何人かは実験者が帰ってくるまでの20分間を我慢強く、または気を紛らわせるなど工夫を凝らして待ち、2つ目のマシュマロを得るのに成功した。この「マシュマロ実験」は対象の4歳児が高校を卒業する年齢に達するまで追跡調査が行われたのだが、誘惑に耐えて2個目を獲得できた群では対人能力・計画実行能力が優れて困難な課題にも対処する傾向が見られ、待ちきれなかった群では優柔不断な性格、自分を無価値な人間と判断、非行に走る傾向などが見られたという。
 この実験は、人が情動を制御して達成感を得たとき、それが次に来る課題に対処する糧となり自信となり、さらに次の段階へ――と正のスパイラルが展開されていくということを示唆しているのではないか。逆に感情に任せた行動を取る、イヤなことを先延ばしにする、つい誘惑に負けてしまう等々、感情の弱さに結びついた事々の積み重ねは、当人にとって不本意な結果となって返ってくる。そして「負」のスパイラルへ……。こうした連鎖はどこかで断ち切り、感情面での「正」の楔を打ち込まねばならない。根拠のない楽観主義は困りものだが、根拠のない悲観主義に縛られていても、輝く未来には繋がらない。国全体が悲観論に陥った観のあるニッポンの人々も、これだけ色々ガマンしたのだから、2つ目のマシュマロを手にできる日も近い――と〝根拠のある〟希望を持てるようになればいいのだが。
(2011年2月18日掲載)