薬事ニュース社
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>>>いびつな美の価値観<<<
 「美」に対する意識は日々高まっており、SNSには多くの美容情報が溢れている。特にインフルエンサーが発信する情報はすぐにバズり、該当商品があっという間に入手困難になることは少なくない。さらにプチ整形だけでなく、鼻や顎にメスを入れる美容整形のクリニック情報や実例を発信する個人も多く、より「美」へのアクセスは身近になっている。一方で「美」が身近にある環境では、特に若年層において「美しくなりたい」という願望が「美しくなければいけない」という価値観に変化し、「美しくあること」が、強迫観念のようになっていると感じる部分もある。
 9月20日に開催された医薬品等行政評価・監視委員会において、GLP-1受容体作動薬、GIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用について意見交換が行われた。会合では、医薬局が「実態を踏まえると抑止力のより強い方策、つまりペナルティのようなものは必要な時期に差し掛かっている」と発言。これに対し医政局は「医政局内でも行政指導のあり方を検討している」と返答した。
 SNSで「GLP-1」と検索すると、ダイエット目的で薬剤を使用している個人による体重減少の事例報告が多くみられる。さも「気軽に痩せて、美しくなれる」と言わんばかりだ。一方で、海外ではGLP-1ダイエットによる急激な体重減少によってシワやたるみが発生したとの報道もなされている。正しい情報を伝え、より厳しい医療広告規制・行政指導で適正使用を促すことは何よりも重要だ。それに加え、いびつな美の価値観に寄り添い、取り除いてあげることも必要な時期だろう。心と体が充実していれば、人の美しさは内面から滲み出す。
(2023年9月29日掲載)