薬事ニュース社
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>>>不都合な真実-29日目の恐怖-<<<
 フランスには「ある日、池の上に大きなハスの葉が1枚浮かび、2日目には2枚になり、3日目には4枚、4日目には8枚になるというように増えていき、29日目に池の半分が葉に覆われた。池すべてが覆われるのはいつか?」という昔話がある。答えは30日目だが、話は「29日目の池の景色は普段と変わらないように人々の眼に映っていた」と続く。地球温暖化問題を取り上げ話題となっている映画「不都合な真実」は、残念ながらこの典型例だ。緩やかで、静かな変化は、よほど注意深く見ていないとわかりにくい。
 地球は、この100年くらいの間少しずつ暖かくなっている。気温が高くなると、各地の気候が変化し、猛暑、寒波、旱魃、集中豪雨などの異常気象が起こる。農作物が多く収穫できたていた地域でも収穫は大きく減り、熱帯地方の病気が日本など温帯地方でも発生する可能性もある。大気中にある膨大な熱エネルギーを台風が吸い上げることで台風は大型になる。裏付けるように、気象災害による損害保険支払額は増加の一途だ。
 地球温暖化対策を検討する組織IPCCによると、温暖化の原因となる二酸化炭素の大気中の濃度を、産業革命以前より36%増のレベルで安定させるには、一人当たりの二酸化炭素の排出量を1900年頃の水準にまで戻さなければならない。飛行機も、エアコンも、抗生物質も、コンピュータもない時代だ。ここに、環境問題の難しさがある。便利な生活を手放さずに環境に負荷をかけないことが求められる。日本は、この省エネを始めとした環境技術で世界をリードできる実績がある。製薬産業だけではなく環境技術にも期待したい。
(2007年3月9日掲載)