薬事ニュース社
オピニオン

>>>ハードルと現実味<<<
 厚生労働省の検討会で実施されていた「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の見直しに向けた議論は、緊急避妊薬の取扱いが俎上に載せられたこともあり、世間の注目を集めた。結果的に、条件付きで緊急避妊薬のオンライン処方を容認することとなったが、その議論の進め方にはいくつかの疑問が残った。
 もちろん、当該検討会は日本における緊急避妊薬の在り方を検討する場ではないので無理もない話ではあるが、緊急避妊という女性に影響の大きい問題に対し、女性委員が1人しかいない状態で議論が進められたことや、若年層がいない委員の年齢構成にも違和感があった。
 また、議論の中身について、性犯罪被害者とそうでない人とを一括りにしてしまって論じられていたのも大きな問題。さらに、より確実な避妊法を教育することや、医療従事者が関与することの意義を広めることは重要であることは間違いなく、それ自体はまさに正論なのだが、現在の枠組みでは不十分であるからこそOTC化などの対応を求める声が上がっているのであり、正論に執着するあまりその事実が置き去りになっているように感じた。
 承認されている緊急避妊薬は処方せん医薬品。スイッチOTC化は別の検討会で否決されたが、今これを「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」に変更し、薬剤師が直接提供できるようにして欲しい、との要望に注目が集まっている。ハードルは高いが、内閣府が取り上げるようであれば一気に現実味を帯びる。
(2019年7月12日掲載)