薬事ニュース社
オピニオン

>>>化血研が弁明書を提出<<<
 化学及血清療法研究所とアステラス製薬との事業譲渡に向けた協議が終了した。新たな交渉を始めるか、あるいは自主存続を目指すのか。今後の動向が注目されるなか、化血研は厚生労働省が日本脳炎ワクチン「エンセバック」の承認内容と製造実態に齟齬があるとして詳細な報告を求めていた問題で、不正製造も隠ぺい行為もないと反論する報告書と弁明書を提出した。
 何らかの不正があった企業に対し、厚労省は行政処分を下す前に弁明通知書を出す。ただ厚労省関係者の話によると、通常は弁明通知書の発出前後に対象企業と十分に話し合うため、今回のように弁明書が返ってくるのは異例だという。
 「エンセバック」を巡る問題の焦点は、不活化処理をしていないウシ胎児血清の使用が、承認内容との齟齬に当たるかどうか。化血研の主張は「不活化処理していないウシ胎児血清の使用は資料に記載されており、承認事項の通りに製造していたが、承認書の読み方により解釈が異なってしまう可能性がある」というもの。これに対し塩崎恭久・厚生労働大臣は、昨年に発覚した不正事案を念頭に「即許可取り消しにしなかっただけのことであり、まずその問題を忘れてはならない」と強調するが、「承認書の解釈の違い」という白か黒かでは裁ききれない、ある意味で感覚的な論点にどう対処するか。化血研は会見に弁護士を同席させるなど、徹底抗戦の構えにも見えるが、水掛け論にも発展しかねないこの議論の結末が気になるところだ。
(2016年10月28日掲載)