薬事ニュース社
オピニオン

>>>スキャンダル騒ぎが生むものは…<<<
 先の民主党代表選では菅首相が無事再選を果たした。さて、この原稿が掲載される頃、氏はまだ首相の座に着いているのだろうか。
 というのも失礼だが、しかし日本はここ4~5年で、あまりにも国の代表が替わりすぎた。この話になると外国人の知人はみな興味津々といった感じで、同時に何となく哀れみと優越感が入り混じったような表情を浮かべるのが常だったりする。そんな時に、退陣の理由が些細なスキャンダルなどにあったりすると、こちらはたちまち説明に困ってしまう。
 よその大国の政界でも醜聞騒ぎは多い。しかしよく考えてみると、火種を起こした当人が退陣にまで追い込まれるケースは、意外と少ないような気がする。クリントン元米大統領は資金疑惑や不倫問題を抱えながらも2期を満了したし、就任早々に離婚劇を繰り広げたサルコジ仏大統領は、最近ではムスリムへの対応等で集中砲火を浴びたものの、やはり退陣する気配はない。醜聞王で知られるベルルスコーニ伊首相の地位は、不思議な位に磐石だ。しかし日本では、どんな些細な落ち度も醜聞の種となり、最終的には致命傷となる。その際、在任中に成し遂げられた功績については、ほとんど語られることがない。
 日本人も、多少のスキャンダルには動じない欧米並みの寛容さを身につけなければ…という話でもないと思うが、しかしどんな小さな傷口も目一杯に広げてみせるマスコミや、それに過剰反応する国民の血祭り騒ぎが生み出すのは、結局のところ政治的空白だけではないかという気がする。その風潮は新政権発足から1年経っても変わりがないが、この調子では国際的なレベルで見た時に、国としての存在感や発言力など、何か大きなものを失ってしまうのでは、という気がしてならない。
(2010年10月29日掲載)