薬事ニュース社
オピニオン

>>>医療制度改革への視点<<<
 このゴールデンウィーク、一般紙は施行60年を迎えた憲法の改正について力を入れていた。改憲派、護憲派ともに戦後の平和に憲法9条の果たした役割は認めつつ、現状と今後についての考えは大きく異なる。各紙の世論調査では改憲賛成が反対を上回っているが、改憲を是とする人のすべてが9条―特に戦争放棄を謳った第1項―を変えるべき、と考えているわけではないだろう。還暦を迎えたから変えるというわけではないが、1つの時代に区切りを付け新たな時代を展望する時期とは言える。東西冷戦終結後の安全保障、グローバリゼーションの進展、環境問題など60年前と情勢は大きく変わっている。少なくとも将来像についての議論は必要だ。
 同じことが、一足先に還暦を迎えた医療保険制度にも言える。疾病構造、人口構造、経済状況が、スタート時と全く違っている。世界最高の長寿国を築いたのは現行制度の大きな成果だ。しかし、成功体験に囚われることなくわれわれは、次の60年を見据えた新しい制度を考えなくてはならないのではないか。厚生労働省予算をやりくりして自然増を圧縮するやりかたが良いとは思えない。社会保障は、国家が国民の安全を保障するという基本的であり最も重要な機能だ。インフォームドコンセント、カルテおよびレセプトの開示、保険者機能の強化、地方分権、チーム医療、病診連携など改革の萌芽となるキーワードはある。われわれには、抜本改革というより新しいものを創る大胆さが必要ではないか、と憲法改正論議を見て考えた。
(2007年5月11日掲載)