薬事ニュース社
オピニオン

>>>プロアクティブ療法<<<
 先日、アトピー性皮膚炎のセミナーを聞いた。アトピー性皮膚炎は軽快・増悪をくりかえす慢性の湿疹だが、適切な治療を行うことで自然寛解が期待できるという。その適切な治療というのがプロアクティブ療法だ。簡単に言えば、外用ステロイドによって症状がなくなっても、治療を続ける治療法のこと。症状がなくなったからといって、治療を止めてしまうと再発を繰り返す。プロアクティブ療法は、ゼロの状態を維持することで、表面には見えない湿疹の元をなくし、自然寛解までもっていこうというものだ。そして、外用ステロイドを塗るときは、症状の重いところのみに薄く塗るのではなく、湿疹があったすべての部位にしっかり塗ることが重要とのことだ。
 ここまで聞いて、何かに似ていると思った。新型コロナウイルス感染症対策である。患者数が増加したときに対策を行い、患者数が減少したらそれを解除してしまう。さらに地域を特定した対策を行っており、その対策も厚い対策とは言えない。これはアトピー性皮膚炎治療でいえば「悪い例」だ。新型コロナが、軽快・増悪をくりかえす慢性の状態になることが危惧される。振り返れば、ゼロの状態を維持することが可能であったのは、1回目の緊急事態宣言後のみであった。ここで、解除を早めて「Go To トラベルキャンペーン」を前倒しするのではなく、緊急事態宣言を延長するという決定がなされていたら、もしかしたら今の状況も変わっていたのかもしれない。
(2021年4月23日掲載)