薬事ニュース社
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>>>バイオマーカーラグ<<<
 市場調査会社によると、ファーマコゲノミクスなどの個別化医療技術の2009年の世界市場は144億ドル程度と推定され、その後の年平均成長率(CAGR)は15.2%となり、2014には292億ドルに到達するという。現在、各社が研究開発に取り組んでいる分子標的薬、抗体医薬品は作用が標的分子に対して特異的であるため効果の有無が予測しやすく、これらの個別化医療技術とのコンビネーションは良い。例えば、HER2遺伝子と「ハーセプチン」、「アービタックス」とEGFR、K-RASと言った具合だ。成長領域であるバイオ医薬品市場と同様、これらの検査を可能にする診断薬事業は成長性が高い。
 オバマ米大統領は、上院議員時代の2006年と2007年の2度、“ゲノム及び個の医療法案”(S.3822、S.976)を個人で議会に提出し、患者の臨床情報とDNAを収集した国立バイオバンクシステムの創設や個の医療を実現するための省庁横断的な組織の創設や遺伝子診断キットの開発に対するインセンティブ付与などを求めていた。バイオバンク創設のために彼が要求した金額は、初年度だけで7億5000万ドル、その後5年間もほぼ同額の資金を投入することを求めていた。日本のオーダーメイド実現化計画が、10年間で総額350億円と、比べて規模の違いに驚かされる。彼の提出した法案は成立しなかったが、大統領に上りつめた今、がん征圧を掲げており、個別化医療の推進もはじまるだろう。「ドラッグラグの次は、バイオマーカーラグが心配」と語っていた医師の言葉が現実味を帯びる。
(2009年8月7日掲載)