薬事ニュース社
オピニオン

>>>数少ない新薬創出国として<<<
 韓国政府は2000年代に入り国際共同治験の受け皿を指定するとともに、資金面や人材育成の面で支援を行ってきた。韓国食品医薬品安全庁(KFDA)が09年に承認した国際共同治験は202件と、00年の5件から、大幅に増加した。韓国での治験は集約化が進んでいるため、日本よりもコストが低く、患者のリクルートが早いのが特徴だ。
 ただ、集約化が進んでいるのは、首都圏への一極集中が激しく中央と地方で医療格差が存在するため、多くの国民が首都の巨大病院をめざし集まってくるためで、患者のリクルートが早いのは、韓国では高価な新薬は保険適用にならないケースがあり、最新の治療にアクセスする手段として患者にとって治験参加がメリットになっているからと考えることができる。このほか、ITの進展で患者情報がデータベース化されているため、治験に適した患者を選びやすい環境が出来上がっている。
日本で、治験推進の妨げと指摘されている要因に、医療提供体制の充実と国民皆保険制度がある。医療崩壊が叫ばれてはいるが、上京しなくても一定水準の医療を受けられる体制があり、皆保険制度のおかげで医療行為が現物給付される――日本が誇る医療制度が、そのまま国際共同治験における競争力向上の妨げとは皮肉なものだ。
 韓国は、状況を良い方向に活用したと言えるかもしれないが、日本も「皮肉だ」と嘆いているばかりいるわけにはいかない。医師のインセンティブづくり、複数施設のネットワーク化、作業効率のアップなどやるべきことは分かっている。
(2010年4月23日掲載)