薬事ニュース社
オピニオン

>>>患者学のすすめ<<<
 前回に引続き、医師需給の話。厚労省は、今後の見通しとして、供給が需給の伸びを上回り、必要な医師数は確保できるとの報告書をまとめた。ただ、医師不足が深刻な自治体病院の関係者は、この報告に納得できない様子。報告書作成にあたり需給推計を行った委員の名前を出して、「この報告書は○○氏の作文だ」と、まくし立てる場面も見られた。
 今回とりまとめた医師の需給見通し。「医師需給」と聞くと、単なる数の問題かと思うが、そう単純なものでもない。報告書でも指摘しているように、地域や診療科における医師偏在、病院・診療所間の不均衡などの問題が、医師の“不足感”を生み出していると言える。ただ、こうした問題は、病院機能の分化・集約化といった地域における医療提供体制、さらには専門医制度のあり方などにも係わってくる話。つまり、医師需給の問題を話し合うには、今後の日本の医療のあり方そのものを議論しないと解決しない、といったら言い過ぎだろうか。
 「患者学も必要」――。ある委員は、患者においても気をつけるべきことがあると指摘する。専門医志向が強い昨今、何でもかんでも病院の専門医に診てもらおうとするのではなく、地域の診療所を利用するなどしないと、病院の機能分化、役割分担は進まないというわけだ。医師の需給、さらには地域における医療提供体制のあり方など、行政・医療関係者はもとより、住民においても課題を共有する必要がある。
(2006年8月10日掲載)