薬事ニュース社
オピニオン

>>>震災から10年<<<
 東日本大震災・原発事故から10年。戦後最悪の自然災害となったこの震災では、岩手、宮城、福島を中心に死者、行方不明者、災害関連死は計約2万2000人に上る。大地震と津波、そして原子力発電所の事故、史上例のない複合災害となった。あの日の記憶はいまだ鮮明で、テレビの画面越しに見た様々な映像はとても現実とは思えなかったことを覚えている。
 5年ほど前に仕事で気仙沼に訪れた。まだまだ復興からほど遠く、一面空き地が広がっていた。空き地一帯には元々、住居があったが全て流されてしまったと聞き、あらためて衝撃を受けた。現在国は30兆円以上を投じて防潮堤や災害公営住宅をなどのインフラ整備を進め、被災地ではハード面の復興はかなり進んでいる。しかし被災地でも仙台や都市部に人が集まる傾向が強く、復興の実感にも差が出てきているという。
 また福島の復興はまさにこれからで、帰還困難区域の解消、住民の帰還などさまざまな課題を解決しなければならない。原発内に残る溶融核燃料の取り出しが見通せないほか、除染土を引き受ける中間貯蔵施設の行方もままならないのが現実だ。
 大震災は日本に多くの課題を突きつけたと思う。エネルギー政策や、少子高齢化に伴う地方の衰退、政府の危機管理体制の不備など、様々な問題を浮き彫りとした。今後首都直下地震はいつ起きてもおかしくないと言われる。あらためて東日本大震災で学んだ教訓を生かし、対策を進めなくてはいけない。
(2021年3月19日掲載)