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>>>新型コロナワクチンのコスパ<<<
 会計検査院は3月末、新型コロナウイルスワクチンの接種事業について報告書を取りまとめた。そのなかで、厚労省が確保した計8億8200万回分のワクチンに関して、「算定根拠が不十分」だったと指摘。厚労省は「ワクチン製造販売業者の供給可能数量を確認したうえで、特定のワクチン製造販売業者がワクチンの開発に失敗することなどがあったとしても国民にワクチンを接種できるように、供給可能数量を基に将来にわたるワクチン接種回数等のシミュレーションを行って決定したとしているが、厚労省がワクチンの確保にあたり作成していた資料には、確保することにした数量に係る算定根拠が十分に記載されていなかった」とし、暗にムダや非効率があった可能性を示唆した。
 そのうえで、「今後、ワクチンと同様に確保する数量に不確定要素のある物資を緊急で確保する場合であっても、数量に係る算定根拠資料を作成・保存し、事後に数量の妥当性を客観的に検証できるようにすること」を求めた。このほか、厚労省がワクチンの在庫数量すら把握していなかったことも明らかにし、「管理を適切に行うために、基本的な情報となる在庫数量を適時適切に把握することができるよう、体制を整えること」とした。
 会計検査院が示した費用対効果の側面からの注文に対しては、「公費を使って購入している以上、事後に検証できるよう、根拠を明確にしておくのは当然」といった声がある反面、「厚労省だけの問題ではない」との見方もある。世界的なワクチン獲得競争が続くなか、国内メーカーのワクチン開発の見通しは立たず、日本はワクチン確保の面で主要各国の後塵を拝し、国民の不安も高まっていた。つまり、ワクチン確保は政治問題でもあったわけだ。実際、当時の菅総理は、ファイザーのCEOに直談判していたという。もっとも、「利益を得たのは一部の外資大手だけ」との恨み節も漏れ聞こえる。「ワクチンに要した費用の何分の一かでもいい、平時から製薬企業の研究開発支援に回っていれば、ワクチンや治療薬の開発でも、ここまで後れを取ることはなかったかも知れない」。これも、コロナが残した教訓のひとつか。
(2023年4月28日掲載)