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>>>アルツハイマー治療薬が誕生<<<
 エーザイとバイオジェンが開発したアルツハイマー病治療薬「アデュカヌマブ」が米国食品医薬品局(FDA)から迅速承認された。病気の進行に直接介入する根本治療薬としては初めての承認となる。アルツハイマーの治療薬開発は世界的に難航しており、多くのメーカーが撤退していく中で、ここまでこぎ着けたことは大変喜ばしい。
 承認への道のりは、険しかった。一度は有効性の証明は難しいとして、実施中だった2本の臨床第3相試験を中止。その後、追加データを含めて再解析を行った結果、片方の試験で主要評価項目を達成したとして、FDAに申請した。しかし、FDAの諮問委員会は昨年11月、有効性に否定的な見解を示し、審査期限を3カ月延長していた。こうした紆余曲折を経て承認はされたが、FDAの委員が今回の承認を受けて辞任するなど、専門家の間でも判断が分かれている状況だ。このような状況を踏まえFDAは、承認後にランダム化臨床試験を実施して、期待される臨床的ベネフィットを明確にすることを求めている。万一、ベネフィットが確認できなかった場合には、FDAは今回の迅速承認を取り下げることができるため、もう一山乗り越える必要がありそうだ。
 米国のアルツハイマー病患者数は現在600万人、日本における認知症患者の数も約600万人と推定され、うち7割弱がアルツハイマー病だ。高齢化に伴い、患者数は今後増加することが見込まれている。薬価など含め、まだ不透明な部分はあるものの、この革新的新薬の今後を注視していきたい。
(2021年7月16日掲載)