薬事ニュース社
オピニオン

>>>薬の第二のライフステージ<<<
 資源の再活用――という言葉はよく耳にするが、この1~2ヵ月間で「医薬品の再活用・新規利用」のケースを3つ4つ目にした。具体的には、喘息治療薬が腎臓がんに対し有効ではないかとして臨床試験を開始するとしたケース、半世紀にわたり使用されてきた抗精神病薬が難治性白血病に対抗し得る可能性があるとされたケース、HDAC阻害作用を持つ抗がん剤が移植片対宿主病の発症率を有意に抑制したケース――等々。いずれも海外文献に拠るもので、現時点では実際の臨床には用いられていないのだが、従来の適応からは少し想像がつき難いものもある。しかしそれは、当該医薬品が「標的とするもの」を軸にして、視線の方向を変えて探索してみた結果、得られた成果なのであった。
 薬の一生は、化合物を探るところから始まり、数々の臨床試験を経て認可を得、臨床現場で用いられ、最終的には特許が切れるか思わぬ副作用で市場から撤退することで終わる。それをヒトの一生と照らし合わせて思いを至らせてみると、人生の後半に再び活躍の道が拓けて良かったな、と応援したくなる。
 今後は、既存の医薬品でも、上記のようにターゲットとする対象物からの探索、遺伝子発現からの探索等により、視点を変えた新たな再利用の道が拓けるかもしれない。抗がん剤にしても罹患した部位別による分類ではなく、遺伝子型別による切り口で捉えられつつある現在、各疾患領域で従来とは異なる開発トレンドが見られ、医薬品の再利用が進むだろう。開発に掛かる膨大な労力と資金のことを鑑みれば、これは新たな戦略となり得るのではないか。ふと我が身を顧みれば、いつの日か予想もしない自分を再発見して、意外な場で過ごす老後の人生が待っているかも、と考えると楽しみであるが、どうなることか。
(2014年1月31日掲載)