薬事ニュース社
オピニオン

>>>がん医療の課題解決に患者と協働を<<<
 がん対策基本法が施行されて3年。がん医療の均てん化への道のりはまだ半ばだが、今年のがん学会学術総会、がん治療学会学術集会を取材して新たな変化を感じた。
 がん学会学術総会では、「今、がん研究に求められること――がん研究に関する提言――」をテーマに、関係学会、日本医師会、大学病院関係者、患者団体、製薬企業、与野党国会議員、厚労省、経産省、文科省の担当官、マスコミらが一堂に会して、シンポジウムを開催。①研究資金②人材育成③国民との協働について、「産学官患医が一丸となり取り組む」とした「大阪宣言2010」をまとめた。
 がん治療学会は、昨年の学術集会から患者アドボケートラウンジを開設し患者会を招いていたが、今年はさらにがん治療学会がん診療連携委員会のメンバーと患者会との意見交換の場を設けた。シンポジウムでも「がん難民をなくす」をテーマに、患者側の意見を聞いた。そこでは、NPO法人HOPEプロジェクトが行った調査によると、働き盛りのがん体験者の3人に1人が離職や転職を、4割が減収を経験しているという。HOPEプロジェクトの桜井なおみ理事長は、企業の治療のための長期休暇制度も2年間が限度というケースがほとんどであることを指摘。「がん医療の進展に社会がついてきていない」と就労支援の必要性を強調した。
 相談支援センターの活用、ドラッグラグなどの問題のほか、がん医療の進化で生存期間が延びたことで、経済的な問題も浮き彫りになっている。どちらの学会も、患者、ステークホルダーとともに問題解決にあたるという姿勢を明確にしていることは良い傾向だ。これから議論が始まる第2期がん対策推進基本計画が実り多いものになるよう期待している。
(2010年11月12日掲載)