薬事ニュース社
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>>>薬価制度改革案に見る製薬産業の覚悟<<<
 製薬協が発表した薬価制度改革案に対し、早くも賛否の声が聞かれる。新薬の価格は「届出価格承認制」とし、特許期間もしくは再審査期間中の医薬品等は「エグゼンプト・ドラッグ」として引下げ対象から除外する一方、特許失効後のいわゆる長期収載品は、後発品への移行を促進する観点から価格を一定幅引下げることなどを柱とする案は、確かに製薬業界発の提案としてはインパクトがある。「中小メーカー切り捨てだ」という恨み節が聞こえてくるのも不思議ではない。
 しかし、恐らくはそうした批判や反論は覚悟のうえなのだろう。「イノベーションの評価」を確立しなければ製薬産業に未来はないという固い信念のもとに作成されたことが容易に想像できる。なぜなら、中小メーカーだけではなく、制度案作成の中心的役割を担った国内トップメーカーにおいても、売上に占める長期収載薬の比率は決して小さいものではないからだ。そのうえどんなに開発投資をしても、失敗のリスクは常に付き纏う。その意味では大手も中小も条件は同じ。爆発的ではないにしろ一定の売上が見込める長期収載薬を捨てて、飽くまでイノベーティブな新薬に賭ける意気込みを、ここは評価すべきなのだろう。
 欲を言えば、原案では明記されていたいくつかの「数字」が、最終的に削除されてしまったのは残念。中小メーカーの理解が得られなかったためとされるが、「数字」自体の妥当性はともかくも、その程度のネゴシエーション能力では、駆け引きに長けた行政を説得できるかどうか。薬価制度の歴史は「つまみ食い」の歴史であることを忘れてはならない。
(2007年7月27日掲載)