薬事ニュース社
オピニオン

>>>「急がば回れ」<<<
 「鉄は熱いうちに打て」とも「急いては事を仕損じる」ともいう。時機を見定めるのは難しい。民主党の代表選も終わり、今度こそ本当に、世の中は選挙モードへと突入した。民主党前代表の辞任のタイミングに関しては評価の分かれるところだが、それを言ったら何やかやと首相の座に居座り続けている人もいるのだから、与野党痛み分けというのが順当なところだろう。時宜に適った判断を下せるかどうかは、一に潮目の変化に対する感度にかかっている。空気や漢字が読めないのには目を瞑るとして、こと国の針路を決める闘いにおいて、この潮目を読み違えては致命的だ。
 武田薬品の長谷川閑史社長が、「量とスピード」から「質」に重きを置いたR&D方針への方向転換を宣言した。いわく、「リスクはあってもこれしかないから、これに縋ってやるしかない、という気分があった。それが重なってPⅢくらいで落ちるという事業としてはまずいことになっていた」
 目に余るといっては語弊があるが、最近は開発中止が相次いでいたことも事実だ。今回の方針転換は、そういった潮目の変化を見逃さなかった英断ということもできる。あるいは遅きに失したとの見方もあるかもしれない。いずれにしろ、2010年問題という差し迫った危機を目の前に大きな賭けには違いない。と同時に、「焦っても仕方がない」という長谷川社長の「スピード化放棄」宣言に、時代の変化を読み取ることもできる。FDAの審査期間長期化は顕著になっているし、安全性重視は世界的潮流でもある。潮目というのは、いつだってこっそり変わっているものなのだ。
(2009年5月22日掲載)