薬事ニュース社
オピニオン

>>>やり始めたらやめられない、のだろうか<<<
 2代連続の総理大臣の政権投げ出し、汚染米の不正流通問題に相撲界の大麻疑惑、果ては米国に端を発した金融不安と、ここ最近、明るいニュースをとんと耳にしない。「希望」を見出すには、世界の果てにでも行くしかないのだろうか。
 などと暗い世相に辟易していたら、世界の果てならぬスウェーデンはストックホルムから、2夜連続で快挙の報が届いた。ノーベル物理学賞、化学賞と立て続けに日本人研究者が受賞の栄に浴したのである。特に化学賞を受賞した下村脩氏の受賞理由である「蛍光たんぱく質」の発見は、医学、薬学分野の進歩にも多大なる貢献をしており、製薬業界にも馴染み深いものだろう。発光物質を抽出するために採取したオワンクラゲの数がなんと85万匹にものぼるというその下村氏が、次代を担う子どもたちに贈った言葉は「やり始めたらやめたらダメ」。自身の経験を踏まえた子育て術だとか。
 ところで、「知的探求」にあってはご託宣のごとくに響くこの言葉も、現世の「利潤追求」に置き換えるや、逆説的な戒めに聞こえて仕方ない。止まるところを知らない金融不全は、要するに誰かが思い付いた儲けの方程式を、誰もやめさせることができなかったことの結末のように思えてならない。目先の利益ばかり見て、行き過ぎた儲け主義の行きつく果てを見ようとしなかった、そのツケの取り立てに、世界中が追いまくられているわけだ。目に見えない現象を可視化するためには、学究の徒と同じく、偶然とひらめき、それに多少の幸運に頼るほかはないのだろうか。そうであるなら、やっぱり世界の果てにでも行かなければ、希望の光は見出せないような気がする。
(2008年10月17日掲載)