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>>>2022年度診療報酬・薬価改定<<<
 岸田政権発足後初の改定となる2022年度診療報酬改定は、医師などの技術料に当たる「診療報酬本体」を医療費ベースで0.43%増(国費ベース約300億円)、薬価改定は▲1.35%(約1600億円)で決着した。このうち薬価改定の内訳は、市場実勢価格に基づく薬価改定、「市場拡大再算定」「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」などの影響分で▲1.44%(約1600億円)。これらに、不妊治療の保険適用のための特例的な対応分として0.09%(約50億円)を上乗せした薬価改定全体で▲1.35%になる。財務省が廃止に向けたロードマップの提示と段階的な縮小を迫っていた「調整幅」に関しては、最終的に現行の「2%」で落ち着いた。
 製薬団体は、薬価制度改革のメニューに「新薬創出加算の対象品目の拡大」や「先駆的医薬品および特定用途医薬品の評価の見直し」「新型コロナワクチン・治療薬の開発の評価」などが盛り込まれたことを挙げ、「イノベーションを評価する方向で一部改善が図られた」との認識を示している。
 確かに、薬価制度改革の骨子案では、当初の論点には無かったイノベーション評価の推進策として、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン・治療薬の承認取得についても、「新薬創出加算」の企業指標に加える案が追加された。製薬協も、「コロナ禍でワクチンや医薬品の重要性・必要性が再認識された」「ライフサイエンスはデジタルやグリーンと並ぶ重要戦略分野であり、安全保障上も重要な分野と位置付けられた」などとしたうえで、「イノベーションの評価に関する薬価制度上の課題は、革新的創薬や経済安全保障といったテーマに直接関係する」として、薬価政策の重要性を強調している。
 ただ、「調整幅」のほか、「中間年薬価改定」のあり方に関しては、「引き続き検討する」として結論が先送りされた。こうした点を踏まえても、今回の改定が製薬業界にとって「エポック・メイキング」とまでいえるかは微妙。そして、製薬産業を取り巻く環境が変わり、政権が代わっても、「薬価を引き下げて診療報酬引き上げ分を捻出する」という構造だけは変わらない。
(2022年1月28日掲載)