薬事ニュース社
オピニオン

>>>バーゲニングパワー<<<
 大まかに業界環境を理解するとき、「ファイブ・フォーシズ・モデル」(5つの力のモデル)という概念が使われる。これは産業構造が基本的に、①業界内競争②売り手③買い手④新規参入⑤代替品――の5つの競争力で成り立つという新古典的な経営戦略論の骨格概念。業界やそこに位置する企業の収益性は、これら競争力が互いに及ぼす力で左右されるというもの。そして、それらいずれかの競争力の影響が増して価格面で優位にたつと、対峙する競争力は利益確保が困難になる。よって、強い競争力の台頭は、基本的に警戒される。
 先ごろ繰り広げられた、医療用医薬品の取引慣行是正等に向けた話し合いでは、調剤薬局チェーンによる総価契約、過度の値引き要求などの問題も指摘され、当該法人群が「悪者扱いされる」(調剤薬局企業関係者)ような空気もあった。昨今、組織小売業というのは業界を問わず、広域化、大型化による規模の経済で、バーゲニングパワー(取引における交渉力)を強めてきた。既存の“秩序”からすれば、好ましからざる新たな競争力ということにもなるし、上記ファイブ・フォーシズ・モデルの視点からすれば、対峙する関係業界の利益を侵す存在と映ることだろう。今回の議論でもそうした気分が、ディフェンディングチャンピオンであるメーカーはじめ、新たな力の矢面に立つ卸による“けん制”となって現れたともとれる。そんな、教科書通りの化学反応を垣間見たようで、一連の議論は違った意味で興味をそそった。

(2004年12月24日掲載)