薬事ニュース社
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>>>2020年をリキッドバイオプシー元年に<<<
 昨年6月に「がん遺伝子パネル」が保険収載されたことは、がん医療における大きな変革だった。早くも今年、新たな変革が訪れようとしている。中外製薬が1月に行った決算説明会において、リキッドバイオプシー(LB)である「FoundationOne Liquid」の承認申請を20年中に行う予定であると発表した。
 「血液1滴でがん検査」というフレーズがよく使われるLBは、少量の血液で全身のがん細胞の有無を判定することができる検査。採血のみで検査が行えるため、侵襲性が低いことが患者にとって大きなメリットだ。がんの早期発見はもちろん、治療中の薬剤耐性への対応や予後のモニタリングにも大いに役立つことが期待される。
 LBに対して手を上げているのは中外製薬のみではない。昨年11月、東芝が東京医科大学や国立がん研究センターらとの共同研究によって開発したLBの実用化に向け、20年にも実証実験を始めると発表。また今年1月、エーザイが米バイオベンチャーとLBによるがん遺伝子パネル検査の共同研究を開始したことを発表した。
 さらにコンパニオン診断にはなるが、DNAチップ研究所は昨年9月、EGFRに活性化変異のある非小細胞肺がんの層別を目的としたLBを国内承認申請している。加えて、東レの膵臓がんや胆道がんの遺伝子変異を調べる検査キットは、厚労省より「先駆け審査指定制度」の指定を受けている。
 研究開発の加速は医療の進歩につながる第一歩だ。それぞれの企業の並々ならぬ努力と挑戦に敬意を表し、20年がLB元年になることを願っている。
(2020年2月14日掲載)