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>>>誰が拾い上げるのか?<<<
 京都大学の本庶佑特別教授がノーベル生理学・医学賞を受賞した。受賞理由は「免疫抑制の阻害によるがん療法の発見」。免疫抑制分子であるPD-1分子を同定し、世界で初めてがん治療の応用に成功したことが高く評価された。この研究成果によって生み出された抗がん剤「オプジーボ」は、医療の世界に大きなインパクトを与えただけではなく、日本の医療保険・薬価制度にも多大な影響を与えた。
 本庶氏に限らず、近年の日本人のノーベル賞受賞者は、会見等で基礎研究の重要さを強調するとともに、基礎研究に対する国の投資が少ないことに警鐘を鳴らしている。日本人ノーベル賞受賞者が誕生するたびにこの話題が出てくるのだが、改善する兆しは一向に見られず、むしろ悪化の一途を辿っているようにみえる。
 国家財政のことを考えれば、無用なところに税金を使うべきではないという主張は当然だ。ただ、税金の使い道を考える時、本当に効率や成果のみで判断しても良いのだろうか。今話題となっている基礎研究もそうだが、医療や福祉、芸術、文化等々、単年度の予算の枠組みで図ることの出来ないことは沢山ある。金になることは、むしろ一般企業が進んで取り組む。国が、非効率・非生産的なものを切り捨ててしまったら誰がこれを拾い上げるのだろうか。
(2018年10月26日掲載)