薬事ニュース社
オピニオン

>>>「卵は一つのかごに入れるな」<<<
 これは株式相場の格言。トラブルが起こっても全滅しないようにリスクは分散しようとの意味だ。新型インフルエンザのワクチン接種に関して、この格言を思い出した。
 ワクチン接種は、年内が国産ワクチン、輸入ワクチンは年が明けてからというスケジュールに大体なっている。この輸入ワクチンに関し、「安全性は大丈夫か」「全て国産にできなかったのか」との意見も多く聞かれた。日本人の「国産は安心」という思いはとても強い。たとえば、食料自給率向上を叫ぶ声は大きい。しかし、某経済学者は言う。「自給率100%になったら飢饉が起こる。江戸時代に逆戻りだ」と。今秋に猛威をふるった台風が、農作物に大きな影響を与えたことは記憶に新しい。海外から分散して輸入しているからこそ、食料は安定供給されるのだ。今回のワクチンも、100%国産でまかなった場合、万が一何らかのトラブルが起こったら、社会に与える影響は甚大だろう。
 国産ワクチンとは違ったタイプのワクチンがあったほうがいいかもしれない。たとえば、血液型がA・B・O・ABと分かれているのは、人類が滅亡しないためだとか。全て同じ血液型だと、強い病原菌が現れた際に全滅する恐れがあるが、いろいろタイプに分かれていれば、まぬがれるというもの。この観点から見れば、国産ワクチンはどのメーカーも同じ株、同じ製造方法とのことなので、違ったタイプの輸入物があることでリスクが分散される。輸入ワクチンに対し、政府側は「国産では足らないから輸入」との見解に感じられるが、リスクの分散という意義もあるのでは。もちろん、安全性の確認は前提条件だが。
(2009年12月18日掲載)