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>>>都内の梅毒感染者数が過去最多のペース<<<
 東京都内の梅毒感染者数が、過去最多のペースで増加している。都によると、今年5月21日時点で感染者数は1422人。過去最多だった昨年の同時期は1188人で、比較すると200人以上多い。都内の感染者数は近年増加傾向だったが、特に2021年以降急増。梅毒は江戸時代に流行した過去の病気というイメージがあるが、現代でも猛威を振るう。SNSで出会った不特定多数との性行為や、性風俗店の利用などが増加の要因とされているが、淋病など梅毒以外の性感染症の感染者数は増えておらず、正確な原因は分かっていない。
 かつて梅毒は根本から治療する薬がなく、皮膚の症状を多少緩和する薬や対症療法しかなかったため、多くの患者が死に至る恐ろしい病だった。現代でも恐ろしい病であるのは変わりないが、ペニシリンの普及で重症化するケースはほとんどないとされる。
 日本ではペニシリン系の抗菌薬の服薬治療が主流だったが、2022年1月に世界的な標準治療薬「ステルイズ」が発売され、治療の選択肢が広がった。服薬治療は1日3回、2~4週間程度服用する方法が一般的だ。だが「ステルイズ」は、早期梅毒のケースでは1回の筋肉注射で治療が完結するため、患者にとっての利便性が高い。また患者が音信不通になり治療が中断することも少なくなり、感染を広げるリスクが低下する効果も期待されるという。
(2023年6月9日掲載)