薬事ニュース社
オピニオン

>>>税率の視点から世界を見ると<<<
 大手製薬企業ファイザーとアイルランドに本社を置くアラガンが11月23日経営統合を発表した。実質的にはファイザーがアラガンを買収した形となったが、新たな統合企業の法人登録先はファイザーの米国ではなく、アラガンのアイルランドに移るという。実はこれと似たようなことが以前にも起こっている。今回の合併の当事者であるアラガン、それまでは米国に本籍を置く企業だったのが、今年初頭のアイルランドの大手後発医薬品企業アクタビスとの合併に際し、社名は「アラガン」を引き継ぎ、本籍をアイルランドに移しているのである。あれもこれも、法人税率が米国より低いアイルランドに法人登録先を移し、税負担軽減を図っているのではないかと見られているが、企業が採る方策として誤ってはいない(道義的な問題は別)。ちなみに米国の2015年の法人所得税率は高く、35%。アイルランドは3分の1程の12・5%だった(OECD-Tax Database)。ニュースで取り上げられる難破船がいつも「パナマ船籍」なのも、船舶にかかる税金が安く済むからである。ちなみに消費税率が高いとされる北欧諸国の法人所得税率はと言うと大体20~25%くらいで、消費税率とほぼ同等だ。そしてなぜか消費税率の高い北欧諸国は幸福度も高いという調査もあったりする。また世界の億万長者(ビリオネア)が最も多く住んでいる都市はロンドンとのことだが、ビートルズが英国の政治家を「TAXMAN」と揶揄して歌っていた半世紀前とは異なり、現在は特に外国人に対する税金優遇策が功を奏し億万長者天国となっているようだ。ということでロンドンの億万長者の主流は英国人ではなく、インド人だったりロシア人だったりする。
(2015年12月11日掲載)