薬事ニュース社
オピニオン

>>>正解は見えない<<<
 先日、日本感染症学会と日本化学療法学会が合同開催した学術集会を取材してきた。やはり新型コロナウイルス感染症に関する演題も多く、興味深く講演を聴いた。印象に残ったのが、日本ではまだCOVID-19に罹っていない人の方が多く、逆に欧米ではCOVID-19に罹っていない人は少数派ということ。現在でも、日本ではマスクや部屋の換気といった感染予防対策を実践している人が大半で、その甲斐あってこうした状況になっているのだという。欧米では、COVID-19に罹っていないという少数派にはどのような特徴があるのか調査研究が行われ始めたという点も面白く感じた。
 なるほど、マスクなどの感染対策は予防の観点で言えば効果が高いという事がよく理解できた。ただ、感染者が少ないということは集団免疫のことを考えると良いことばかりではないらしい。マスクやアルコール消毒、不特定多数との接触減少といったコロナ対策の影響で、インフルエンザやRSウイルスなどの一部の感染症が激減した。興味深いのが、これらの感染症に対する個人・集団での免疫が低下しており、コロナ対策が緩和された後に反動的に大流行する可能性が危惧されている点だ。
 コロナ禍に入り、感染症疫学は激動の時代を迎えている。何が正解か見えない状況はしばらく続くだろうが、科学的な根拠に基づく対応をとり続けることが重要ということに変わりは無い。学会取材を通じ、最新の情報に常にアンテナを張っておくことは重要だと感じた。
(2023年5月12日掲載)