薬事ニュース社
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>>>「予防」という市場<<<
 増大する国民医療費を少しでも抑制しようと、現在盛んに「予防医学」の必要性が言われている。厚労省は今年6月、「健康増進事業実施者に対する健康診査の実施等に関する指針」を発表。健康診査の結果が、必ずしも疾病の「予防」に結びついていない現状を課題とし、健診の検査項目の見直しや健診結果に対する保健指導など、検診そのもののあり方を見直す考えを示している。さらに一部の医療関係者の間では、より進んだ考え方として「EBMからEBHへ」という概念まで生まれてきている。「EBH」のHとは、ヘルスケアの略。つまり「科学的根拠に基づいた医療」から「科学的根拠に基づいた健康増進」へと、「予防」を前提とした考え方も登場し始めている。
 こうした状況を、企業が黙って見ているはずがない。様々な企業が「予防」をビジネスチャンスと捉え、事業参入を狙っている。「予防」には、食事や運動など、毎日の生活習慣の見直しが必要だが、これらの分野は「医療」と違い、参入のハードルがそれほど高くない。市や大学を巻き込んで、中高年を対象としたウォーキング教室や、さらにはフラダンス教室といった付加価値をつけたカルチャースクール的な事業を展開している企業もある。また、保険者、医療機関等と共同でコールセンターを形成し、疾病予防に向けた生活介入プログラムを展開している企業も見受けられる。
2000年にスタートした介護保険制度は、民間事業者の参入などで、市場は約6兆円にまで成長したとも言われる。「医療」に比べ、他業種からの参入ハードルがそれほど高くはない「予防」という市場。成長する可能性は十分に秘めている。

(2004年12月10日掲載)