薬事ニュース社
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>>>HIV予防教育の後進国に誰がしたか<<<
 「厚生労働省(のエイズ対策)は甘い」。5月下旬、厚労省内で行われた「HIV検査普及週間」の記者会見での出来事。その会見に出席した同週間イベントの司会を務めるラジオDJの山本シュウ氏が、そう厳しく非難した。「WHOから、日本は先進諸国で唯一、新たなHIV感染者・エイズ患者数が増加傾向にある国だ」と名指しされているものの、相変わらずの増加基調で推移している日本の現状を憂いて発した言葉であると推察できる。そしてそれは同時に、氏のエイズ対策への真摯な態度を印象づけた場面でもあった。残念ながら、役人のそれよりもインパクトも情熱も強かったといわざるを得ない。
 だからといって、氏のテンションと比べて「やる気がないのでは」と厚労省を非難できないだろうし、するわけでもない。同省は99年に策定した「エイズ予防指針」に沿って講じ、昨年4月からは同指針を抜本的に見直している。エイズ発症の入口となるHIV感染予防に注目し、普及啓発の対象を青少年等に軸足を置いた施策等を展開中だ。しかし感染者数は一向に減る気配を見せない。06年度の新規感染者数は952人と過去最高を更新した。
 感染を防ぐ最良の手段は、早い時期での予防教育というのが世界の常識。しかし日本では、教育現場での予防教育の普及率は低い。ここに原因があるのではないか。そしてその一因として、生徒の親の認識違いがあるのではないか。聞けば、学校で教えると、生徒の親から「過激な性教育だ」と授業の中止を求めるケースが少なくないという。予防教育の普及率を上げるには「親自身が性をタブー視しないことが大切」と諭す専門家がいる。先生の教え方にも問題がないとはいえないが、子どもよりも前に、親の性に対する意識改革が必要ではないかと考えさせられる。
(2007年6月22日掲載)