薬事ニュース社
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>>>ワクチンギャップ<<<
 「ドラッグラグ」「デバイスラグ」に続き、最近、業界内で声高になってきている「ワクチンギャップ」。周知の通り、ワクチンに関しては国としても開発を推し進めており、厚労省は06年にワクチン産業ビジョンを完成。さらに、ビジョンに書かれているアクションプランを実行するため、07年には推進委員会を設立し、ワクチン施策を推し進めてはいる。ただし、だ。実際にはなかなか進んでいないのが現状。昨年のはしか流行に見られるように、ワクチンに関して日本は、世界水準と比べ大きな遅れをとっており、「日本ははしかの輸出国」と、諸外国から揶揄される極めてお粗末な状況だ。
 ではなぜワクチンは普及しないのか。そのひとつとして業界側が強く主張しているのが、財源の問題だ。EFPIAによると、現在日本で接種可能なワクチンの60%は個人負担。今後この政策が変わらない限り、普及は進まないとし、さらには、原則公費負担となっているワクチンに関しても、その財源は政府ではなく、地方自治体によるもの。各自治体の財力によって、ワクチン普及率に差が出るとして、ワクチンを公的保険に組込むべきと主張する。
 国の台所事情が厳しい以上、財源問題をどうするかという点はかなりの議論が必要だ。ただ、子宮頸がんに対するHPVワクチンなど、従来とは違ったワクチンが世界で次々と開発されている中、日本がこのままでいいわけはない。抗体医薬に走る企業が多い中、専門家からは「ワクチンに全く手を出さないで、日本の企業は果たして生き残っていけるのか?せめて1、2社ぐらいワクチンをやる所が出てこないと危険」といった声も聞こえてくる。
(2008年6月27日掲載)