薬事ニュース社
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>>>安心の医療と医療基本法<<<
 脳出血をおこした東京都内の妊婦が8つの病院に受け入れを断られ、その後死亡した。最初に受け入れを断った都立墨東病院は、都内9カ所ある総合周産期母子医療センターのうち、最低2人とされている当直態勢を確保できていなかった。
 舛添要一厚生労働大臣は、「週末に当直が1人しかいないのに周産期医療センターだと言うのは羊頭狗肉」と都を厳しく批判し、石原慎太郎東京都知事は、「産科と小児科が絶対的に足りないのは国の責任。あまり国に任せてられない」と反論した。
 今回の問題では、妊婦のかかりつけ医と都で、症状の伝達についての食い違いも問題となっている。しかし、「言った」「言わない」に、問題を矮小化してはならないし、国と都で責任をなすりあうのも見苦しい。現在、医師増員策や再発防止策が議論されているが、根っこの部分を考えてみたい。今回の問題は、そもそも医師が確保できていれば起きなかった。黒川清・政策大学大学院教授は、今回の問題に関連して、一般紙に医療基本法の制定を求める見解を発表している。医療基本法は、医療法などの上位に位置し、医療における憲法として機能するもので、国の医療提供義務を明確にし、患者の権利とともに医師、医療関係者の責務、権利も規定するものとなるだろう。患者団体も制定に向けた活動を行っている。基本法を制定すれば問題が解決するわけではないが、景気への不安が高まる中、国がセイフティーネットとしてどこまで責任を持つのか明確にする意義は大きいと思う。
(2008年11月14日掲載)