薬事ニュース社
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>>>医薬分業とターレスの相関<<<
 今、医薬分業の客観的評価への影響から、関係者がその結果に眉をひそめるものに健保連の分業調査がある。分業生来の大儀のひとつを覆す「外来処方の方がコストがかかる」という調査結果が含まれるとされるからだ。収入が減り支出が増え、各人の可処分所得がますます細る中で、コストに敏感で、かつ分業 50 %を経て目の肥えた生活者が、そうした結果に寛大であるかどうか。ことによると彼らは怨嗟を含んで言うかもしれない。――分業とは、払わなくても良いコストを強要する「虚業」ではないか、と。もちろんその批評は必ずしも正しくはないかもしれない。論理的な「反論はできる」 ( 日薬幹部 ) のもそうだろう。ただ、生活者にどう映るかは、別の話。分業は急進展を遂げ、黄金期から成熟期に向け成長を続けている。猛進しなければ来られなかった一面もあるだろう。が故に、その過程ではいくつかなおざりにしてきたものもある。
 古代ギリシアに自然哲学の祖・ターレスがいる。彼は星の研究に没頭して空ばかり見上げて歩くあまり、足下の穴に落ちて笑われたという逸話でも知られるが、今の分業になんとなく相関を見出してしまう。星の数 ( 分業率 ) ばかり見上げて、足下の穴 ( 満足度、コストベネフィット、規制緩和等 ) にあまり気をとめなかった分業。懸命さは良いが、歩の進め方次第では後世に滑稽な逸話を残しかねない。

(2004年6月18日掲載)