薬事ニュース社
オピニオン

>>>オオカミ少年の嘘<<<
 自宅で仕事をしていたら、けたたましいベルの音が鳴り響いた。火災報知器が作動したのだ。慌てて外に駆け出し周囲を見渡す。驚いた様子でこちらを見ている人がまばらにいるものの、火の様子や煙の臭いは感じられない。事前に火災報知器の点検があるという報せは受けていない。ともすると子どものイタズラか?さまざまな思いを巡らし家へ戻る。恐々としながら仕事に手を付け始めると、再びリリリリと強い音が耳に飛び込んできた。二度目だ。見えない場所で火災が起きているのかもしれない。もう一度外へ出て周りの様子を確かめる。しかし相変わらず焦げ臭い空気は立ち込めていない。はて、と首を傾げて部屋に帰り仕事を再開すると、またぞろ、あのベルが騒ぎ出す。すでに驚きや恐怖は消えた。私は外に出ることもせず、仕事を進めることを決め込んだ。後日、このベルが誤作動だったという詫状を受け取った。
 5月11日までを期限としていた3度目の緊急事態宣言が5月末まで延長となった。変異種の感染スピードを考えると致し方なしと思う一方、果たしてその宣言が本当に効力を持つのか甚だ疑問だ。根拠のある対策や科学的な総括がないまま、不自由を求められる生活がズルズル続くことは、国民からの不満や不信感につながりかねない。実際にその反発が人々の行動に現れ始めている。国民を守るための「緊急事態宣言」がオオカミ少年の嘘にならないよう、新型コロナウイルス感染拡大の根本的解決につながる希望の道を、今度こそ示してほしい。
(2021年5月10日掲載)