薬事ニュース社
オピニオン

>>>製薬産業論の浸透と患者の声<<<
 製薬各社社長の新年あいさつは、グローバルファーマと自社の強みを活かしたスペシャリティーファーマと、各社の方向性が見て取れるものとなった。一年前は、「日本発の国際企業」「革新的な製品を世に出す」「特色ある新薬開発」など、イノベーションを意識させる言葉が多く、研究開発に対する積極姿勢が目立った。これらの言葉の背景には、政府の経済成長戦略大綱で、医薬品・医療機器産業の国際競争力強化が掲げられたことや、当時の安倍政権の産業育成策「イノベーション25」で、医薬品が成長を期待される分野の一つと位置づけられたことがあった。
 たしかに、「革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略」が策定されるなど、環境整備で前進が見られたが、イノベーションに報いるための新薬価制度についての議論は、製薬業界の期待とおりにはいかなかった。政権交代後、政府の「イノベーション」への姿勢は消極的になったように見える。政権交代による政策の変化は、やむを得ない面もあるが、製薬産業としては政権が変わっても産業育成策が揺るがないよう、製薬産業論の一層の活用、浸透を図りたいところだ。その一つの方法として、患者会支援や国民へのアピールが有用だろう。昨年施行された「がん対策基本法」の制定には、患者の声が大きく影響した。がん対策基本法のように、患者の声を政策に反映させようと患者団体が、疾患横断的に連携を始めた。こういった活動への支援を考えてみるべきではないか。
(2008年1月18日掲載)