薬事ニュース社
オピニオン

>>>小さな命が呼ぶとき<<<
 アメリカ映画『小さな命が呼ぶとき』を見てきた。主演は『インディ・ジョーンズ』のハリソン・フォードと、『ハムナプトラ』のブレンダン・フレイザー。しかし、お涙頂戴的な邦題(原題は“Extraordinary Measures”で温度差がある)を見ての通り、これはアドベンチャー大作ではなく、シリアスな人情ドラマだ。ブレンダン扮するエリート・ビジネスマンが、難病に苦しむ2人の子供を救うためにキャリアを捨て、ハリソン扮する変わり者の科学者とバイオ・ベンチャー企業を設立、新薬開発に突き進む──という物語である。
 始まってみるとやはりというか、ストーリーの背骨は実にまっすぐで、父が子を思う愛情も眩いくらいにベタ。とはいえこれが実話に基づく話となれば、やはり心が動かされる。よくよく見れば一つ一つのシーンも、熱さの割には安っぽい脚色が見当たらない。また中盤以降では、新薬開発におけるシビアな現実も随所でイヤらしく顔を出して、よくある感動大作の展開とは趣を異にしていたのも良かった。見方を変えれば、驚くべきアクションや演出こそないものの、これも一種のロマンチックなアドベンチャー映画と言えそうな気がしなくもない。無論、前出の2シリーズに比べれば、興収結果は桁違いに地味だけれど。
 そんなこの映画に対して感じた唯一の“驚き”はといえば、ここまでベタな物語に不覚にも共感させられてしまった、ごく平凡な人間としての自分を発見したことかもしれない。とはいえ見終った後に年齢を感じたり、自分を責めたりしたわけでもない。一言でいえば、実に後味の良い映画だったと思う。
(2010年9月3日掲載)