薬事ニュース社
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>>>古い薬に新たな効果発見<<<
 この半年ほどの間に、既存薬の再開発に関するケース公表が目立っている。主に海外の学術機関発表のものだが、▼抗真菌剤「ミコナゾール」が多発性硬化症に▼抗うつ薬「イミプラミン」が小細胞肺がんに▼抗精神病薬「ペルフェナジン」が難治性リンパ性白血病に▼抗菌薬「ペンタミジン」が進行性腎臓がんに▼免疫抑制剤「ラパマイシン」が膵臓がんに▼降圧剤「ロサルタン」がマルファン症候群に▼肺がん治療薬「クリゾチニブ」が小児の悪性脳腫瘍に▼抗がん剤「サラカチニブ」がアルツハイマー病に――それぞれまだ実験段階ではあるが有効の可能性があるとされている。
 これら既存薬は化合物ライブラリのスクリーニングによって新たな疾患に有効の可能性があるとして同定されたものが多いが、既存薬を再利用することのメリットは、体内動態など安全性が既に確立されているという点にある。古い薬に新たな効果を見出すという手法は、画期的・独創的新薬の探究に力を入れている研究開発側から見ればインパクトに欠けるかも知れないが、合理的な方法論であると言えよう。米国では国立衛生研究所(NIH)内の先進トランスレーショナル科学センターで“医薬品再配置”に関わる研究も進められているようだ。日本でも今春発足した日本医療研究開発機構(AMED)では、臨床応用基盤研究の一環として「ドラッグリポジショニング(医薬品再配置)等の創薬の基盤研究の推進」が謳われているなど動きが見られてきている。古い薬であるが故に薬価が低く設定される可能性が高いなど懸念すべき点もあるが、今後、既存薬の再開発・再配置を取り巻く動きはどのように進展していくのだろうか。
(2015年6月5日掲載)