薬事ニュース社
オピニオン

>>>60%ショック<<<
 3月末に発表された薬剤師国家試験の結果がちょっとした波紋を呼んでいる。合格率60%は、前回の79%から大きくダウンしただけでなく、6年制への移行期間の2年間を除き、ここ20年では最低の成績だったためだ。6年制薬剤師誕生からたったの3年でのこの急落ぶりに、関係者の落胆もさぞや大きいことだろう……と思ったら、どうもそうでもないらしい。いわく、「試験の難易度が上がっているという認識はない。大学などからは、学生の質が低下したのではないかと聞いている」(厚労省医薬食品局)、「学生の質の低下という弊害が顕著に現れている」(日薬幹部)というわけで、拍子抜けするくらい冷静に受け止めている感がある。要するに、問題は「学生の質の低下」であり、文部科学省を含む学校関係者に一義的な責任があると言いたいようだ。多分、一義的にはその通りなのかもしれないが、果たして、事はそれで済むかどうか。
 確かに、今回の結果は安易な薬学部増設を許した文科省の政策に一因があることは否定できない。法科大学院の例を見ても明らかなように、安易に数を増やせば質は低下する。薬学部増設による弊害に一貫して懸念を表明していた日薬としては、案の定の結果に「それ見たことか」と言いたくなる気持ちも理解できなくはない。しかし、薬剤師を取り巻く昨今の厳しい環境を考えると、そんな悠長なことを言っていられるだろうか。
 医薬分業はいま、猛烈な逆風に晒されている。14年度診療報酬改定では、ターゲットにしやすい大型調剤チェーンが悪者にされたが、議論の過程で中医協委員が指摘していたのは、端的にいえば「カネばかり食うわりに医薬分業のメリットがちっとも見えてこない」ということだ。つまり医薬分業そのものが槍玉に上がっているのである。このうえさらに、医薬分業の担い手を育成する薬学部が「カネをかけて年限延長したのにちっとも中身はよくならない」などということにでもなれば、医薬分業は土台からぐらつきかねない。
(2014年4月25日掲載)