薬事ニュース社
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>>>電話医療通訳サービス事業<<<
 江戸時代に鎖国政策をとっていた日本。開国から約160年が過ぎた今では、訪日外国人が年間で約3100万人となり、在留外国人も340万人を超えた。東京オリンピック・パラリンピックの開催は2021年に延期となったが、これまで国際的なイベントや会議も定期的に開かれており、国際社会の一翼をしっかりと担っていると言えよう。鎖国時代の人々が今の状況をみたらどのように感じるのだろうか。
 昔よりも国内で外国人と接する機会が増えたわけだが、当然、医療の現場においても同様だ。言語や習慣の違いによる様々な問題が浮上している一方、これをフォローする医療従事者やボランティアの活動にも限界があり、行政には対応を求める声が上がっている。厚生労働省が今年始めた「希少言語に対応した遠隔通訳サービス事業」もそんな声に応えたもの。有料ではあるが、医療機関に来院した外国人患者とハンズフリー通話での通訳を提供するもので、アジア圏を中心とした12ヵ国語に対応している。
 また厚労省は、コロナ対応の一環で同様の電話医療通訳サービス事業を6月より開始した。こちらは無料で利用でき、対応言語は英語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語と、「希少言語」のものとは全く被っていない。ただ、訪日・在留外国人の国籍をみるとアジア圏が圧倒的に多いのが実情。欲を言えば、医療機関の負担軽減や観光立国推進の観点から、コロナ対応についてはもう少し対応言語の門戸を広げてもよいのではないか。
(2020年6月26日掲載)