薬事ニュース社
オピニオン
>>>ある取材の日<<<
仕事柄、人に会う機会が多く、「取材」として1対1で話を聞くことも多くある。メディアに対して「言えること」「言えないこと」があるだろう中、一瞬の判断で必要な受け答えをしてくれる取材対象者の方々の、凄まじい頭の回転の速さにいつも感銘を受ける。
先日、NPO法人血液情報広場・つばさの理事長であり、公益財団法人日本骨髄バンクの理事、つばさ支援基金の代表も務める橋本明子さんにお話を伺う機会があった。橋本さんはこちらからの質問に対し、自身の考える道筋をなぞりながら、とても丁寧に言葉や経験を紡ぐ方だった。その上品さにいつしか引き込まれ、「聡明とはこういう方のことを言うのだろう」と思った。86年にご子息が慢性骨髄性白血病と診断され、87年から骨髄バンク設立運動にかかわることとなり、さらに情報交換の「広場」としてつばさを設立したという橋本さん。その上品さの一方で、一貫して「皆が平等に治療を受けられるように」という強い信念を持って物事を見つめ、活動を進めていることが伝わってきた。分子標的薬の登場で予後が劇的に良くなったにもかかわらず、高額な医療費によって治療が継続できなくなった仲間たちの死に直面するなど、やるせない辛い経験もされながら、挫けずに前を向いている姿勢に目頭が熱くなる瞬間もあった。橋本さんのような方にお会いした際、恥ずかしくない自分でありたい、と思う。改めて記者という立場や、自分の人生を振り返るきっかけとなる一日だった。
(2026年3月27日掲載)